くすりの専門家として、サプリメントとどう向き合うか
このブログでは主に薬剤師の転職や働き方について発信していますが、今回は少し視点を変えて、薬剤師として日々感じていることをお伝えしたいと思います。
それが「サプリメント」についてです。
「このサプリ、飲んでも意味ありますか?」——薬剤師として働いていると、こういった質問を患者さんや知人からよく受けます。ドラッグストアや薬局の棚にはずらりとサプリメントが並び、テレビやSNSでも様々な商品が紹介されています。でも正直なところ、「何を信じればいいかわからない」という方も多いのではないでしょうか。
薬剤師の立場から、サプリメントについてできるだけ正直にお伝えしようと思います。
そもそもサプリメントと薬は何が違うの?
まず押さえておきたいのが、医薬品・特定保健用食品(トクホ)・機能性表示食品・一般的なサプリメントの違いです。これを知っているだけで、商品選びの目線がぐっと変わります。
医薬品
有効性・安全性・品質について国が審査し、承認を受けたものです。「この成分がこの症状に効く」という根拠が臨床試験などで証明されており、用法・用量も明確に定められています。治療や予防を目的として使用するものであり、効果の保証という点では最も信頼性が高い区分です。
特定保健用食品(トクホ)
「お腹の調子を整える」「血圧が高めの方に」といった表現でおなじみのトクホは、消費者庁の審査を経て、健康への効果・効能の表示が認められた食品です。個別の製品ごとに審査が行われるため、一定の科学的根拠があります。ただし、医薬品のような治療効果を保証するものではなく、あくまで「健康の維持・増進を助ける」食品という位置づけです。
機能性表示食品
2015年に始まった比較的新しい制度で、事業者が科学的根拠をもとに消費者庁へ届け出ることで、機能性の表示が認められた食品です。トクホと異なり、国の個別審査は受けていません。「届け出ている」という事実はあるものの、内容の精度は製品によってばらつきがあります。パッケージに「機能性表示食品」と記載されているので確認してみてください。
一般的なサプリメント(栄養補助食品)
上記のいずれにも該当しない、いわゆる「ただの食品」です。法律上、健康効果を明示的に謳うことはできません。「健康をサポートする」「毎日の栄養補給に」といった表現にとどまっており、効果の根拠は製品によって大きく異なります。
まとめると、信頼性の高い順に以下のようなイメージです。
医薬品 > トクホ > 機能性表示食品 > 一般サプリメント
もちろん順位が低いからといって意味がないわけではありませんが、「なんとなく体に良さそう」で選ぶのではなく、どの区分の製品なのかを意識することがサプリメント選びの第一歩です。
栄養は「食事から摂ること」が大原則
サプリメントの話をする前に、最も大切なことをお伝えします。それは、栄養は食事から摂ることが最優先だということです。
食事には、サプリメントでは再現できない要素がたくさんあります。食品に含まれる多種多様な栄養素が体の中で複雑に作用し合い、相乗効果を生み出しています。サプリメントは特定の成分を単体で摂取するものが多く、その相乗効果を完全に再現することはできません。
また、食事は栄養補給だけでなく、咀嚼による満腹感・消化機能の維持・食の楽しみといった面でも体と心に大切な役割を果たしています。「サプリを飲んでいるから食事は適当でいい」という考え方は、栄養の観点から見ると本末転倒です。
薬剤師としての立場からも、「まず食事を整えること」を最優先にお伝えしています。サプリメントはあくまで、食事だけでは補いきれない部分を「補助」するためのものです。
薬剤師目線で「効果が期待できる」サプリメント
すべてのサプリメントが無意味というわけではありません。成分によっては科学的根拠が蓄積されており、一定の効果が期待できるものもあります。
葉酸は妊娠前・妊娠初期の女性に対して、神経管閉鎖障害のリスク低減効果が認められており、厚生労働省も摂取を推奨しています。食事だけで必要量を摂るのが難しい場合、サプリメントでの補完が有効です。
ビタミンDは日照時間が少ない地域や、外出機会が少ない方に不足しやすい栄養素です。免疫機能や骨の健康維持への関与が研究で示されており、摂取する意義があると考えられています。
鉄分は特に女性に不足しやすく、貧血気味の方への補給として有用です。ただし過剰摂取は副作用のリスクもあるため、用量には注意が必要です。
薬剤師目線で「慎重に考えてほしい」サプリメント
逆に、薬剤師として「少し立ち止まって考えてほしい」と感じるサプリメントもあります。
飲み合わせに注意が必要なものとして、納豆やビタミンKを多く含むサプリメントは、血液をサラサラにする薬(ワーファリン)との相性が悪く、薬の効果を大きく変えてしまう可能性があります。薬を飲んでいる方がサプリメントを始める際は、必ず医師や薬剤師に相談してください。
過剰摂取に注意が必要なものとして、脂溶性ビタミン(A・D・E・K)は体内に蓄積されやすく、摂りすぎると健康被害を引き起こすことがあります。「天然由来だから安全」という思い込みは禁物です。
効果の根拠が薄いものとして、「飲むだけで痩せる」「短期間で効果が出る」といった謳い文句のサプリメントは、科学的根拠が乏しいものが多い傾向があります。価格が高いほど効果があるとも限りません。
意外と知られていない「サプリメント依存」の怖さ
サプリメントについて話すとき、あまり語られないけれど重要なテーマが「依存」です。
サプリメントは薬物依存のような身体的な依存とは異なりますが、心理的な依存に陥るケースが少なくありません。「このサプリを飲まないと不安」「飲んでいれば何を食べても大丈夫」という考え方が習慣化してしまうと、本来優先すべき食事や生活習慣の改善がおろそかになっていきます。
また、サプリメントへの支出が増えすぎることで、本来食費に使うべきお金が削られてしまうという問題も起こりえます。「サプリにお金をかけているのに、食事はコンビニで済ませている」という状況は、健康の観点から見ると逆効果です。
サプリメント依存を防ぐための心がけ
まず、「サプリは一時的な補助」と意識することが大切です。食生活が整ってきたら、不要になったサプリは見直すという習慣を持ちましょう。
次に、定期的に飲んでいるサプリを棚卸しすることです。「なんとなく続けている」サプリが増えていないか、半年に一度は見直すことをおすすめします。
最後に、体調の変化はサプリではなく生活習慣で解決することを意識することです。睡眠・食事・運動という基本を整えることが、どんなサプリよりも効果的である場合がほとんどです。
サプリメントと上手に付き合うための3つのポイント
最後に、薬剤師として普段から伝えているサプリメントとの付き合い方をまとめます。
まず、「食事で補えないものを補う」という考え方を基本にすることです。サプリメントはあくまで補助であり、バランスの良い食事の代わりにはなりません。
次に、薬を服用中の方は必ず医師・薬剤師に相談することです。市販のサプリメントでも、処方薬との飲み合わせによって思わぬ影響が出ることがあります。
最後に、「なんとなく」ではなく「目的を明確にして」選ぶことです。自分に何が不足しているのかを意識したうえで選ぶことで、無駄な出費と健康リスクを減らせます。
おわりに
薬剤師として、サプリメントを頭ごなしに否定したいわけではありません。正しく選んで上手に使えば、毎日の健康をサポートしてくれる心強い存在になります。
ただ、何より大切なのは「食事・睡眠・運動」という生活習慣の土台をしっかり整えること。その土台の上に、必要な場合にのみサプリメントを加えるというのが、薬剤師として自信を持っておすすめできる考え方です。
何か気になるサプリメントがあれば、ぜひかかりつけの薬剤師に気軽に相談してみてください。


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